くさい女
朝のJRで、
膝の上に口開けたポーチを置いて、化粧する若い女がいる。
同一人物ではなく、その時々で別な女。
当然どいつもこいつも、「ゼロに何をかけてもゼロ」という言葉が相応しい。
ブスはいまさら何塗ったくってもブス。
それでもしっかり見るのは出来栄えではない。
そんなブスに限って貧相な睫毛にこてこてとマスカラを乗せるので、
揺れた拍子にその黒いのがこちらに付着しないよう用心しているのだ。
きのうもそんなブスの座る目の前に立ってしまった。
ロングシートだと何十センチかはブスから離れることができるが、クロスシートの通路側に座られると結構近づく。
安っぽい化粧品ばかり入ったポーチの中身も丸見え。
覗いてるわけでもないのに、見たくもないのにしっかり見える。
鏡ごしに視線を感じたのか、このブスは時々キッとこちらを睨む。
睨んでるんだかわざわざ化粧の途中経過を見せようとしているんだか。
そして頭を振るたび、鼻を突く悪臭。
くさい。
香水臭いのではなくて、「何日か髪を洗っていない」という強烈な奴。
それまで無駄な化粧に気を取られていたが、
頭のてっぺんに見たくもないのに目をやってしまうと、
たいして悪天候でもないのにぼさぼさだ。
でも他にも乗客はいるし、
こちらにもかすかながら仏心が芽生えて(出た学校はカトリックだが)
悪臭の発生源は別な人間ではないか、彼女を疑うのはよそう、と思ったところ、
ブスが途中の駅で降りていった。
悪臭も消えた。やっぱりこいつだったのか!
というわけで車内で平気で化粧するブス
(ここを読んでいるかはわからないが)は、
周りの乗客が何も口に出さなくても、
頭の中では上記またはそれ以上の罵倒をしていることに早く気づきましょう。