こびとさんの話
今まで内緒にしていましたが、
ワタシのとこには、こびとさんが住んでいます。
たまに電信柱のポスターで見ますが、プロレスはしません。
頭には三角の帽子をかぶり、帽子とおそろいの色した服を着ています。
雨の日に蕗の葉っぱの下に隠れている道内在住のこびとさんは、ともだちのようです。
普段は何もせずぐーたらしています。
ゆってる言葉は「わらわら」だけ。あとはわかりません。
主な仕事は記憶の引き出しの整理整頓です。古いものは虫干しします。
たまにせっせと働きます。
ワタシがぼーっとしている間に手元の仕事が片付いていたら、それはこびとさんがなしとげたことです。
職場ではワタシの仕事だけではなく、優しい向かいの席の人の仕事もこなします。
「あ、さっきここにおいてあった書類、みんみんさん知りませんか?」
「なんかさっきこびとさんが仕上げて、ここで決裁待ち」
「このおやつ、いつ持ってきたんだろう」
「さっきこびとさんが担いで走ってた」
こびとさん普段はこのぐらいだったのですが、このたび大仕事を手がけました。
ここのところ、一方的に怒鳴られるは良かれと思った言動をことごとく気に入らないとごねられるは他のエリアの泥をかぶるは言いつけはされるは、と酷いこと続きでございました。
電話が、ほんとに、怖くなりました。
お客様が、すごく、怖くなりました。
何年この仕事してるんだろ。こんなこと、今まであったかなあ。
こびとさんは黙って、ワタシの顔をのぞきこんでいました。
そして、何かわらわら相談すると、ぱーっと四散していきました。
そして昨日。職場に1通の手紙が届きました。
差出人はこないだ窓口に来たお客様で、後日送付していただくようお願いした書類に添えて、丁寧なお礼の手紙がついていました。
「貴方様の明るい笑顔の対応、そしてペンダントも素敵でした。…『逢うごとに、爽やかな笑み、添えながら、優しさ感じ、話す言葉に』草々」
職場なので平静を装っていましたが、もう少年隊のようにバク転したいほどの歓喜でした。
ふとこびとさんを見ると、大仕事の成功に舞い踊っています。
やっぱりあなたたちでしたか。
こびとさんに会いたい方は、この日記の上段に戻って、日付をご確認ください。
でも手紙は、ほっぺたつねっても、今のところ目の前から消えません。